著者は中学生の時に、父親を病気で亡くし、その後母は病に倒れ、
一命をとりとめ車いす生活になり、弟は知的障害とダウン症を抱えていて、
自分以外の家族みんなが障がい者になり、大学で出会った仲間と一緒に、
福祉の会社を起業し、その後フリーランスの作家へと転身する。
文字に書き起こしてみると、その半生は壮絶で、
人の何倍も生きてきたのではないかと思うほど、
人生に一度としてないことが、何度も著者の身にふりかかる。
著者はそれをものともせず、サラサラと、カラカラッと面白く、楽しく
家族の日常を描くエッセイ。
いつも何か悪いことが起きると、その理由を外に探してしまいがちだけど、
自分の周りで起きることは関係なく、
良いことも、悪いことも、何が起きたかが重要なことではなく、
常に自分はどうありたいか、どうしたいのか、どう生きていきたいのかが、
大切なのであって、それ以外のことは窓の外の景色のような、
めぐる季節のようなものなのだと気づかされる。
一度も涙する時間もなく、ずっとクスクス笑いっぱなしの時間でした。
こんなに明るくて、軽やかな気持ちで、安心に包まれて読めるのは、
作者の人柄と、言葉力なのだと思います。
このエッセイを描き上げるのに、どれだけの涙をのんできたのでしょう。
原稿に向かうのに、どれだけの時間がかかったのでしょうか。
”家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった”
なんて愛にあふれた家族へのラブレター。
この言葉を見るだけで、他人の私まで幸せになれます。元気になれます。
素敵な本との出会いで、今年を締めくくることができました♪
著者/岸田奈美
1991年生まれ。兵庫県神戸出身、関西大学人間福祉学部社会起業学科卒業。
「バリアをバリューにする。」株式会社ミライロで広報部長をつとめたのち、作家として独立。100文字で済むことを2000文字で伝える作家。一生に一度しか起こらないような出来事が、なぜだか何度も起きてしまう。
※エッセイより引用
著者/岸田奈美 出版社/小学館